2019/10/31 歌謡曲が好き ザ・ベストテン 杏里 中森明菜

ザ・ベストテン300回杏里「キャッツ・アイ」は本当に1位だったのか?


目次
  1. ランキングにウソはあった?
  2. 計算してみよう
    1. ●「キャッツ・アイ」杏里得点計算
    2. ●「禁区」中森明菜
    3. ●「GOOD-BYE青春」長渕剛
    4. ハガキリクエスト
  3. さいごに

ザ・ベストテンはウソをつかない!という記事を書こうと練っていますと、1983年11月10日300回記念の話が出てきます。
この日ザ・ベストテンは長崎市営陸上競技場での公開生放送を行っていました。

!TBSテレビ ザ・ベストテン 1983(昭和58)年11月10日-36年前(300回)
https://www.thursdayonion.jp/bestten.php?re_rk=bt&re_md=1110

この日の順位ですが、
1 キャッツ・アイ 杏里  
2 禁区 中森明菜  
3 GOOD-BYE青春 長渕剛  
4 挑発∞ シブがき隊  
5 そんなヒロシに騙されて 高田みづえ  
6 メリーアン アルフィー  
7 細雪 五木ひろし  
8 ラッキィ・リップス 早見優  
9 夕暮れ気分 堀ちえみ  
10  UNバランス 河合奈保子
というものでございました。
この300回記念はザ・ベストテン初の試みで各地方へベストテンを出張させるというものでした。番組では今後も系列各局でこれを毎年続けて2010年まで続けようじゃ無いかと思っていたようですね。そのくらいの気概も人気もあった番組だったんですね。

で、300回記念ですから、なんとか全ランクインの方に歌って欲しいわけですが、2位の中森明菜さんは体調不良で欠席となってしまったわけです。その結果「中森明菜が欠席で1位が欠席じゃあまりにも具合が悪いから得点修正して杏里を1位にしたんだ!」という声は当時もあったわけです。

ランキングにウソはあった?

では、本当に杏里さんは1位を取れる点数では無かったか?ランキングにウソがあったのか?というのをちょっとだけ検証したいなと思います。
まず、データですが、キャッツ・アイは1983年8月5日発売。最終的にはオリコン調べで82万枚を売り上げていますので大ヒットしたとも言えるでしょう。

当サイトのデータベースでも、オリコンランキングでは1983年9月26日から10月24日までは1位を獲得しています。また、この曲を使用しているアニメを放送していた日本テレビ系のザ・トップテンでは10月17日から11月21日まで1位を獲得しています。

ザ・ベストテンはレコード・有線放送・ラジオランキング・ハガキリクエストの4要素からランキングを作成しています。各項目の1位から30位を出し、1位を30点、30位を1点という形で点数化し、この時期はレコード45%(3社15%ずつ)、有線10%、ラジオ22%、ハガキは23%を掛けて得点を出すわけです。ですので、番組冒頭で発表される各要素のランキングがわかれば、ある程度ランクイン曲と順位を予想できるというわけです。

レコードランキングは約1週前のオリコン・ミュージックリサーチ・ミュージックラボのランキングデータを使用しています。残念ながら11月7日付(11月2日発表)オリコンランキングでは「キャッツ・アイ」は4位です。他の2誌のデータは私個人は持っていませんがおそらく4位、または3位だったと推測します。番組で発表されたレコードのランキングは4位ですので、このデータは間違っていないと推測します。

有線放送は「全国有線音楽放送協会」のランキングです。関東の有線放送大手キャンシステムと時事タイムス放送社など地方有線事業者の総合ランキングを使用しています。個人的にはこのランキングデータは有していませんが、番組で発表された有線のランキングは3位で、前々週は1位、前週は2位、そして翌週は6位ですので、ここも3位という数字に極端な操作をしたとは考えにくいと思われます。

ラジオリクエストはTBS系列局でラジオを兼営している20局の放送局のランキングデータを総合して使っています。北海道ならHBCラジオ、東北ならTBCラジオといった感じです。これも客観的にデータとしてわかる方法はありませんでしたが、番組で発表されたラジオのランキングは2位です。前週、前々週も2位でしたので、これもそんなに不可思議なデータではありません。(ちなみにこの前週のベストテンほっかいどうでは1位でした)

さて、ザ・ベストテンのランキングの胆はハガキリクエストのランキングです。ザ・ベストテンでの得点比率では番組開始当初は40%を占めており、組織票による同一筆跡のハガキが大量に届くなど客観的なランキングが得られないため、後に得点比率は何度か変更になっています。1983年当時は23%ですから、やはり大きな比率でもあるわけです。この日の番組で発表されたハガキリクエストランキングにはキャッツ・アイは「圏外」として発表されていません。つまり11位以下。ハガキリクエストの順位は、番組関係者以外は真相を知ることができませんので、もし、得点をいじるならここをいじるしかないはずですが、放送された順位圏外なので最高位としても11位でしかありません。

まとめますと
「キャッツ・アイ」杏里 レコード4位 有線3位 ラジオ2位 ハガキ圏外 総合得点8692点
となります。
対する2位・3位は
「禁区」中森明菜 レコード7位 有線1位 ラジオ1位 ハガキ7位 総合得点8689点
「GOOD-BYE青春」長渕剛 レコード5位 有線9位 ラジオ4位 ハガキ8位 総合得点8426点
こうなります。

1位と2位の点差の少なさも、4要素のランキングを見ても、おっとザ・ベストテン、やっちまったんじゃねぇか?って思っても、まぁ不思議は無いわけです。

ちなみに翌週「禁区」は1位に返り咲いていますから、この1週だけの2位ってやっぱり不思議って思わないでもないんですよね。


計算してみよう

では、この4要素を元に得点を計算してみましょう。
おさらいですが、ザ・ベストテンの総合ランキングはレコード売上ランキング3社と有線放送・ラジオ・ハガキリクエストを各30位までのランキングを出して、1位は30点、30位は1点という形で点数化して、各項目の掛率を掛けて3000点満点をつくり、さらに3.333倍して9999点を満点とする点数を算出します。
例えば
 オリコンチャート(比率15%)1位
 ミュージックリサーチ(15%)1位
 ミュージックラボ(15%)1位
 有線ランキング(10%)1位
 ラジオランキング(22%)1位
 ハガキランキング(23%)1位
としますと
 各項目1位は30ポイントですので
 オリコンチャートは30×15=450点となります。以下
 ミュージックリサーチ30×15=450点
 ミュージックラボ30×15=450点
 有線ランキング30×10=300点
 ラジオランキング30×22=660点
 ハガキランキング30×23=690点 合計3000点を3.333倍して9999点となります。
当時とは配点は違いますが西城秀樹さんのヤングマンはこの完全な得点を2週にわたって達成したわけです。


●「キャッツ・アイ」杏里得点計算

・番組発表順位 レコード4位 有線3位 ラジオ2位 ハガキ圏外 総合得点8692点
当サイトで保持しているオリコンチャート以外のレコードランキングは番組発表ではわかりませんので、番組発表のレコードランキングが4位でしたので各社4位であったと推定して計算します。また、圏外だったハガキランキングは11位だったと推定して計算してみます。
 オリコンチャートは27×15=405点となります。以下
 ミュージックリサーチ27×15=405点
 ミュージックラボ27×15=405点
 有線ランキング28×10=280点
 ラジオランキング29×22=638点
 ハガキランキング20×23=460点 合計2593点。3.333倍すると8642.469点になります。番組発表の総合得点は8692点ですので50点の差があります。仮にミュージックリサーチかミュージックラボのランキングが3位であれば8692.464点になりますので発表通りの点数になります。

●「禁区」中森明菜

・番組発表順位 レコード7位 有線1位 ラジオ1位 ハガキ7位 総合得点8689点
同様に番組発表のレコードランキングが7位でしたので各社7位であったと推定して計算します。
 オリコンチャートは24×15=360点となります。以下
 ミュージックリサーチ24×15=360点
 ミュージックラボ24×15=360点
 有線ランキング30×10=300点
 ラジオランキング30×22=660点
 ハガキランキング24×23=552点 合計2592点。3.333倍すると8639.136点になります。番組発表の総合得点は8689点で、これまた50点の差があります。仮にミュージックリサーチかミュージックラボのランキングが6位であれば8689.131点になりますので発表通りの点数になります。
レコードランキングの修正前の点数の時点で「キャッツ・アイ」の方が得点が上でありますので、もう1社レコードランキングが1つ上になるだけでこの週も1位を獲得できたとも言えるわけです。


●「GOOD-BYE青春」長渕剛

・番組発表順位 レコード5位 有線9位 ラジオ4位 ハガキ8位 総合得点8426点
同様に番組発表のレコードランキングが5位でしたので各社5位であったと推定して計算します。
 オリコンチャートは26×15=390点となります。以下
 ミュージックリサーチ26×15=390点
 ミュージックラボ26×15=390点
 有線ランキング22×10=220点
 ラジオランキング27×22=594点
 ハガキランキング23×23=529点 合計2513点。3.333倍すると8375.829点になります。番組発表の総合得点は8426点で、これまた50点の差があります。仮にミュージックリサーチかミュージックラボのランキングが4位であれば8425.824点になりますので発表通りの点数になります。

ハガキリクエスト

「キャッツ・アイ」の今週の得点が、計算上完全に合致する点数が(計算上発表の点数と同じ点数を「出すことができた」ことは他の順位を少しいじってもこの得点は出現しないため)出るというのは、中途半端な点数のごまかしは無かったということになります。TBSがもし本当に点数を誤魔化そうとするなら、ハガキリクエストのごまかしが最も簡単にできることです。しかし、仮に4要素が表示される10位以内ではなく11位という中途半端な場所に置いたのは、私は「本当にそのランキングだった」のではないかと思っているんですね。

「キャッツ・アイ」のランクイン全ての「ハガキリクエスト」を含めた推定4項目順位を出してみました。11週ベストテン内にランクインしています。
1983年09月15日 総合7位 7096点 レコード総合1位 有線14位 ラジオ11位 ハガキ23位
1983年09月22日 総合4位 7936点 レコード総合2位 有線6位 ラジオ6位 ハガキ19位
1983年09月29日 総合2位 8472点 レコード総合1位 有線1位 ラジオ3位 ハガキ19位
1983年10月06日 総合2位 8389点 レコード総合1位 有線1位 ラジオ1位 ハガキ22位
1983年10月13日 総合2位 8466点 レコード総合1位 有線1位 ラジオ1位 ハガキ21位
1983年10月20日 総合2位 8389点 レコード総合1位 有線1位 ラジオ1位 ハガキ22位
1983年10月27日 総合2位 8266点 レコード総合1位 有線1位 ラジオ2位 ハガキ22位
1983年11月03日 総合2位 8186点 レコード総合3位 有線2位 ラジオ2位 ハガキ20位
1983年11月10日 総合1位 8692点 レコード総合4位 有線3位 ラジオ2位 ハガキ11位
1983年11月17日 総合5位 7919点 レコード総合8位 有線6位 ラジオ3位 ハガキ11位
1983年11月24日 総合9位 6996点 レコード総合9位 有線5位 ラジオ6位 ハガキ18位
当サイト独自の集計ではありますが、このランキングで得点が番組発表のものと完全に一致しました。先ほどの説明通り得点に各項目の掛率がある上に3.333倍していますから、どこかの項目順位が違っていたら確実にこの数字になりません。

これを見る限り、キャッツ・アイはファンのハガキリクエストが低調でレコード売上先行型だったこと。アニメ番組の主題歌でありアニメの人気の高まりや地方局での放送開始などがあり、曲のリクエストを行うのとレコード売上の時期が一致しなかったことで1位を逃し続け、「禁区」のレコード売上が下がったタイミングと「キャッツ・アイ」のレコード売上とラジオランキングがまだ高い中でハガキリクエストのピークがぶつかったことで僅差の1位が生まれたのではないか?こう推測するところです。いずれにせよ1位としては総合得点が低い結果であります。

そして、禁区ですが、翌週1位に返り咲きますが、レコードランクが9位、ラジオこそ1位を維持しましたが8206点という低得点での1位となり、さらに翌週には松田聖子「瞳はダイヤモンド」に1位を奪われることになるのです。

さいごに
ザ・ベストテンの魅力は、レコード売上の「数」ではなく「ランク」から計算していますので、どれだけレコードが売れてもハガキリクエストや有線リクエスト、ラジオでのランキングが上がらないと上位が狙えません。上位を狙うのは難しいながら、「強い曲」が落ち目の時にこのようなランキングが発生することは避けられないランキングの算出方法でもあるわけです。そういう意味でも面白いなとも思うんですね。

そして、私は少なくともこの300回記念放送に関してはランキングの誤魔化し、不自然な点数の追加などは無かったと断言してもいいと思います。黒柳徹子さんが番組を開始するにあたって「ランキングでウソをつかないこと」をスタッフと約束していたというのも資料にあります。そう思うと私はこの回、仮に順位が入れ替わって、中森明菜さんが1位であっても、久米さん、黒柳さんは「中森明菜さんは体調が思わしくなく長崎に来られません」といつものように出演できない理由を言うのではないかとおもうのです。出演できないことをアナウンスすることも含めた「正直さ」がこの番組がファンに支えられた理由なのだから。

CAT'S EYE
杏里
1983/8/5

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