2014/09/29 歌謡曲が好き ラジオが好き

津嘉山正種になりたかった話



小学校高学年の頃には、もう宵っ張りな子供だった。

テレビも好きだけど、ラジオも好き。自分の部屋を持たなかったワタシはカーテンで仕切られただけの居間のテレビの音に耳を傾けるか、それともイヤホンでラジオを楽しむかが唯一の「夜中の楽しみ」まさか子供がそんな時間まで起きていたとは多分親も知らなかったと思われる。

とかく毎晩ラジオに耳を傾けていたワタシではあるが、同年代が聞くラジオといえば、当時は深夜放送の全盛期、当地ならアタックヤングとかその後のオールナイトニッポンが定番であっただろう。しかし、ワタシはどうもそういう「ちゃらちゃらしたラジオ」を好まなかった。歌謡曲は好きだけど、それは昼間で充分だったんだ。

23時に決まって合わせる放送局はNHK-FM。クロスオーバーイレブンという番組があった。ワタシが適当にダイヤルを回していたら入ってきたこの番組。なんて渋いんだろうと驚愕したんだ。

当時午前0時をもって終了するNHK-FMの最後の番組がクロスオーバーイレブンだった。いかにも深夜という、いや、今から考えると23時というまだまだ「早い」時間に、こんな深夜を感じさせる番組。オープニングからこんな具合だ。


街も深い眠りに入り
今日もまた 一日が終わろうとしています
昼の明かりも闇に消え
夜の息遣いだけが聞こえてくるようです
それぞれの想いをのせて過ぎていく
このひととき
今日一日のエピローグ
クロスオーバー・イレブン


その渋い声と、アジムスのFLY OVER THE HORIZONという、もう、なんとも「深夜感」な曲が、ワタシを虜にしたのだ。


この番組の選曲はワタシの聞いたことの無い楽曲ばかりだった。メジャーな曲がかからないわけでは無いのだが、当時の「歌謡曲」なお子様にはどれも新鮮で、いや、衝撃的ですらあったんだ。今思えば選曲者の一人は「小倉エージ」氏である。ミュージックマガジンの創刊者。半端な選曲では無い事は納得であったりする。

そして、曲の合間に流れるのは、津嘉山正種氏の朗読。その話も泣きそうなほど寂しいもの、笑っちゃうような軽妙なもの、さまざまあったけど、やっぱり声、津嘉山正種氏の声なんだ。

渋くて、聞きやすく、機械的な感じもして、人情味もあるようにも聞こえる。こんな声になりたいと思った。

朗読、番組ではスクリプトといっていたが、これは2部構成だった、半分を朗読すると、津嘉山氏、朗読の速度をゆっくり落としていくんだ。そして、たいていインスト曲を1曲挟む、そして朗読の続きがある。

まだ、ラジオからエアチェック(録音)してた時代、津嘉山氏の声を録音しない層は、この朗読が遅くなるのを合図に録音を開始する。

そのうちワタシはFM STATIONという雑誌を購入することになる。歌謡曲なら明星だろうが、当時出てきていた新興のガールポップもよく特集していたし、なによりクロスオーバーイレブンの曲目が全て紹介されていた。

そう、クロスオーバーイレブンは曲紹介が一切無いので、かかっていた曲がどんなに気に入って、レコード店に走ろうとしても、歯がゆさがあったんだ。これがまさか雑誌に2週間分きっちり曲目が入っているとは。

ラジカセを買ってもらってからは、この番組を録音するようになった。番組の最初から最後まで、そして、恥ずかしながら自分の声でこの台詞を言ってみる。


もうすぐ時計の針は
12時を回ろうとしています
今日と明日が出会うとき
クロスオーバー・イレブン


自分の声は高すぎて、どうがんばってもワタシは津嘉山正種にはなれなかった。アジムスのOCTOBERのレコードを入手して、そのタイミングで声を発しても、きっと今でも、私の声は高い。

Outubro (October)
アジムス
1980/1/1


クロスオーバーイレブンは2001年に終了しました。社会人になってもしばらくはこの番組を聴いていましたが、東京の夜の23時台は恐ろしく明るく、今じゃ小学生もこの時間起きているのではないでしょうか。

Fly over the Horizon
アジムス
1979/1/1

新:岩井小百合さんのシングル楽曲を聴いてみる
前:年末年始大型歌番組雑感
次:城達也になれなかった話①
このページのURL
https://www.thursdayonion.jp/article.php?article=1228
top