2021/05/18 歌謡曲が好き 野猿 90年代歌謡曲 2000年代歌謡曲

野猿がいた時代


目次
  1. 野猿がデビューしたころ

ふと、最近頭の中を流れだして、止まらない曲があった。

今聞いても、この雰囲気を感じられる曲は多くないと思うんだよね。



このFirst impressionという曲、歌っているのはとんねるずのお二人が率いていた「テレビ番組の裏方」を集めたグループである「野猿」そして、この曲でメインボーカルを務めていたのが「CA」と称していた音声担当の女性。この声はほかに類する感じを知りませんで、有名アーティストにも称賛されたのですが、本人は芸能界での活動を拒否、この曲は紅白歌合戦にも内定していましたが、それも固辞しています。

この曲、なんでしょうね、Aメロ、サビ、サビって感じの盛り上がりが2つくるような不思議な曲で、聴いてて気持ちよくなりますし、クルマで走っていても、ふと流れてくるといいなぁと思ってしまう曲です。作詞は秋元康氏、作編曲は後藤次利氏といえば当時のゴールデンコンビです。

カップリングの「泳げない魚」「TODAY」も不思議な魅力のある曲で、このシングルは今でもプレイリストの手の届くところに入れてあります。

泳げない魚(feat.CA)
野猿 feat.CA
2000/2/2


TODAY(feat.CA)
野猿 feat.CA
2000/2/2


First impression (feat. Ca)
野猿
2000/2/2

Get down
野猿
1998/4/29

野猿がデビューしたころ

フジテレビのバラエティ番組「とんねるずのみなさんのおかげでした」で、そのスタッフを集めた形で作られたユニットである「野猿」職種も会社も別々な、どちらかといえば「おっさん」が集まって、格好いい曲を歌う。番組のヒットもありますが、なによりもその楽曲は時代に合っていたし、歌詞もその当時の世相を吹き飛ばそうといったものが感じられました。

1997年のオリコン年間シングルチャートです。安室奈美恵さんが220万枚以上を売り上げて1位、KinkiKidsなど男性アイドルもいるのですが、女性ボーカリストが強いのを感じることができるのではないでしょうか。

そのなかで、男性グループというのが、ちょうどいない時期になるともいえましょう。カラオケで大ヒットした猿岩石や楽曲を歌うのがとても難しいTMrevolutionやBzは歌いにくいという層もいそうです。

1998年4月29日に「Get down」でデビューした野猿。そのデビュー曲はアイドルグループを意識したものでした。メンバーの「持ち場」を意識したPVと、正直つたない踊りで、色物ではありましたが、曲は非常に哀愁があって、よく練られたとも思われます。



そしてセカンドシングルが9月17日に発売の「叫び」この曲で野猿はブレイクすることになります。覚えやすい曲にサラリーマンに共感を受けるような歌詞が「おっさん」にも受けたことは大きいと思います。個人的にもこの曲はよく仲間とカラオケに行くときの定番曲でありました。オリコン最高位は2位で

叫び
野猿
1998/9/17



そして、この成功で、彼らは立て続けにシングルを出すことになります。「本業」としてのテレビの裏方と、歌とダンスを両立させる様は逐次番組でも紹介されます。それがさらに共感を呼ぶのですね。そこにはサラリーマンが突然スターダムに上がるという困惑だったり、喜びだったりを本人たちの言動から感じられて、人間味としても魅力に感じるのですね。

3枚目のシングルは冬のイメージの「SNOW BLIND」

SNOW BLIND
野猿
1998/12/16



1999年になって4枚目のシングルはこちらもオリコン3位を獲得した「Be cool!」この曲も風刺にあふれ、秋元康氏の真骨頂というか、おっさんに書く詩は本当にいいんだよな。

Be cool!
野猿
1999/2/24



5枚目のシングル「Selfish」

Selfish
野猿
1999/8/4



6枚目のシングル「夜空を待ちながら」

夜空を待ちながら
野猿
1999/11/10



そして冒頭の「First impression」に繋がります。2000年です。新しい時代になる、その瞬間、同じグループが「変える」ことを選択したことになります。バブル崩壊後の「失われた10年」といわれた1990年代、そのもやもやした雰囲気を反骨精神を含めた歌詞で、普通のサラリーマンが歌い踊る、そして、その素人が紅白に出たり、キャーキャー言われる。こんな「面白いこと」ができるのが、長くお笑い界に君臨する「とんねるず」テレビから離れた今も何か面白いことを虎視眈々やっているように見えます。

野猿は2001年に「撤収」その最後のシングル曲が「Fish Fight!」作詞も作曲も後藤次利氏で、氏の仮歌詞がそのまま歌われたとされています。しかし、この歌詞がなかなか意味深で、個人的には最も野猿らしい曲だったのかもしれないと思わないでもありません。

Fish Fight!
野猿
2001/2/28



格好良い曲を歌い続けた「野猿」が、泥くさく、生臭く、そして撤収後にそれぞれの職場で活躍を続けていたことは、短い活動期間の中で、サラリーマンも夢を見て、そして、振り返れば輝いていたと思える「経験」なのかもしれません。

今、日の当たらない人を「引き上げる」「夢を持たせる」そんなことが、なかなか発生しない世の中です。貧富は開き、より富める人と、あがいても這い上がれない人が分かれます。そんな世の中だからこそ、少し前のこんな曲で、少しだけ夢を見る。それも歌謡曲好きの醍醐味かもしれません。
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