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家のレコード環境を構築しました


2023/11/09  歌謡曲が好き レコードが好き

目次
  1. 1986年のミニコンポとレコードプレーヤー
    1. フォノアンプ?フォノイコライザー?
    2. 高音質を求めるのか?
  2. うっ、動かん!
    1. もう一台レコードプレーヤー買った。。。
  3. レコードの「回転数」の話
  4. DENON DP-29Fの調整

さて、今週の記事は少し趣向を変えて、我が家のレコード環境の話を少し。
当サイト管理者「もくたま師匠」なんて名前を言っておりますが、実際のところ師匠なんて名乗れるような知識も経験もありません。
ただ、子供の頃に買うことができなかったレコードが、今になって中古、しかもジャンク品として入手ができるのが嬉しくて、結構買い漁っていたりします。なにしろジャンクのレコード、1枚20円程度ですからね。

で、入手したは良いけれど、なかなか聞く場所も、時間も取れない。今回、物置として使っていた車庫を改造して居場所をつくってみました。ここには給湯と暖房用のボイラーがあるので冬でもそこそこ暖かいはずと踏んでいます。

ここに意気揚々と持ってきたのが古いSONY製レコードプレーヤーPS-F8。1986年製造というミニコンポサイズのレコードプレーヤー。


1986年のミニコンポとレコードプレーヤー


1986年はまだまだアナログレコードは多く発売されていた時期なのですが、CDの規格を提唱した1社がSONYで、1982年にはその1号機が発売され、1986年には既にLPレコードからの移行が進んでいた時期です。
このPS-F8は単品発売の機種ですが、ミニコンポLIBERTY(1987年にはレベッカがCM出演することになる)に接続できたりするものじゃないかな。1986年には「CD当たり前!」的なカタログで、当時の子供たちはこんなミニコンポを部屋に置くのが憧れだった時代です。既にレコードプレーヤーはオプション扱いでした。この機種も簡便なフォノアンプを内蔵したモデルです。

それにしても、当時穴の開くほど眺めて欲しがったミニコンポのカタログが鮮明に保存されているのがネット時代の素晴らしさであります。

ソニー坊やと呼ばれた男 Liberty 1987年9月
https://bouya.officew.jp/liberty-1987-09/

 SONYカタログ
SONYカタログ


このレコードプレーヤー、持ち運びしやすいし、フォノアンプが入っていますので、適当に接続しても鳴ってくれる、多少取り扱いが雑でも良いという意味で重宝していたんです。


フォノアンプ?フォノイコライザー?

フォノアンプって、きっともう説明しないとならないですね。フォノイコライザーともいいますが、レコードの溝から針が取り出した音は小さくて、そのままでは聞くことができません。そのため高級な機種ですとフォノアンプが必須となります。
もう一つ、たまにレコードの裏に「録音特性:RIAA」なんて記述をみかけるはずです。「Recording Industry Association of America」アメリカレコード工業会の略称なのですが、1954年(昭和29年)に各レコード会社が特性の違うレコードを出していたのを統合したこと、そして、低音レベルを下げ、高音レベルを上げて溝を刻むことで面積の限られる盤面を有効に活用するということを行っています。つまり、フォノイコライザ、フォノアンプを通さずに盤面だけの音を聞くと低音が響かず、高温はシャリシャリと極端な音を鳴らします。高低差の大きい曲で針に耳を近づけて聞いてみると、なんとなくわかるかしら?これを再生しながら補正する、こちらの方が大きな役割といえましょう。

安価な機種はそのフォノイコライザー、フォノアンプ機能を内蔵していますので、そのままLINE端子としてアンプ等に繋げば聞くことができますが、機能面だったり音質面では期待できないですね。


高音質を求めるのか?

私がスペシャルな音響機器を使うこと無く、まぁまぁ聞けるラジカセ的なものやミニコンポ的なものだけで聞いているのは、もちろんお金が潤沢ではないという大きな問題がありますが、私たちが子供の頃、そんな高級機種で聞いていないじゃないですか。
当時の子供たちが持っていたラジカセに、モノラルでノイズの多いAMラジオで聞いていた。今レコードで聞く音ですら「充分いい音」であって、これ以上極端な音で聞くと「なんか違う」感じになっちゃいそうなんですよね。(とはいえ以前紹介した新冠のレ・コード館のスペシャルなプレーヤーとスピーカーってのはそれはそれで素晴らしいのです)

そんなんで、高級オーディオの話やMCカートリッジとか、プレーヤーの質面でうんちくは語らず、まず適当に繋いで再生しよう!ってコンセプトです。


うっ、動かん!


さて、意気揚々持ってきたPS-F8、コンセントを刺して、スピーカーに繋いでスイッチオン。「カチャコン!」という音はすれどターンテーブルが回らない・・・

このプレーヤーを前回稼働させたのは多分軽く半年前、保管していた車庫も今年は暑かった。ゴムパッドを外し、ターンテーブルを手でまわ・・らない。

ほぼ間違いなくゴムベルトの劣化です。ターンテーブルを取り出すと千切れて張り付いている「ベルトだったもの」があります。そりゃ動かねぇよ。
さて、ソニーさん、保守部品としてベルトを扱っているか・・・見当たりませんね。こうなると社外品のベルトを買うわけですが、その長さはメーカーや機種で違いますから、まず長さを測ります。
 ターンテーブルベルト部外周
ターンテーブルベルト部外周
ボケボケですが、私が中学生の頃から使っている裁縫箱に入っていたスケールが測りやすそうです。ちょうど円周は66cmあります。モーターに接続されているプーリーまでの分を考えても68cmってところでしょう。多分660mmので大丈夫だと思いますので、これを発注します。

ついでですので散々使ったカートリッジ(針)も変えておきましょう。こちらも純正品の針は見当たりませんねぇ。純正品はVL-55G・ND-155Gという型番なはずです。
 カートリッジ(針)
カートリッジ(針)
レコード針といえば「ナガオカ」を思い出す方も多いのではないかと思います。ダイヤモンド針を世に知らしめたわけですが、1990年に自社製造を打ち切り会社を解散。ただ、現在も旧山形ナガオカが株式会社ナガオカとして針を世に出している企業であります。こちらの型番はGD88-155ですね。

このタイプは、メーカー問わない感じで互換品が結構あるので、多分オーディオテクニカのATN3600Lでも同じじゃねぇかなぁと思いまして発注。(あくまでじゃねぇかなぁなので、真似して再生できなくても責任は取れません)

こちらの修理は次回の記事で取り上げますね。

レコードプレーヤーPS-F8を修理しました。そしてDP-29Fの調整
https://www.thursdayonion.jp/article.php?article=1528


もう一台レコードプレーヤー買った。。。

一応、当サイトイベントで使うこともあって、レコードプレーヤーは必要。お手頃価格の1台を仕入れてきました。DENONのDP-29Fという機種で、1万円ちょっと程度で買える安価なプレーヤーです。こちらもフォノイコライザーは内蔵しています。
 DP-29F
DP-29F
高級オーディオで名を馳せた「デンオン」ではありますが、今は「デノン」です。
ちなみに交換針はDSN-84となっていますが、これまたATN3600Lと同じじゃねぇかなぁ。こちらも実際の交換は自己責任ですけどね。


レコードの「回転数」の話


現在一般的に流通しているレコードは1分間の回転数として45回転と33と1/3回転の2種類です。(SP盤の78回転もあるが今や一般的ではない)

子供の頃から45回転とか33回転(さらに1/3ってなによ)って中途半端な数字だなぁと思っていたんですよね。33・1/3回転は3分で100回転ってのはなんとなく理解できるのですが、45回転だよなぁ。

当然レコード制作側は正確な回転数で聞いてくれることを考えてレコードを作っていますので、再生するレコードプレーヤーも正確な回転数で使って欲しいですし、実際に聞いていますと回転数がちょっと異なるだけでも音の高さが変わるわけで、違和感を感じることになります。

正確な再生が求められる放送局用など高性能なレコードプレーヤーにはストロボ発光とターンテーブルに刻まれた穴で回転数を調整できる機能がついていたりします。発電所からやってくる電源の周波数はある程度は正確ですので、これを使って調整すると正しい回転数が得られます。(なお、電力需要や自然エネルギーによる変動により周波数変動はあるので、必ずしも完璧とはなりません)
私がいた中学校の放送部にあったレコードプレーヤーにもそれがあって、「お昼の放送」の前にしっかりきっちり合わせていたんですね。
大人になってこのストロボ発光によるレコードプレーヤー、ちょっとズレていることに気がつきます。当地北海道の電力は50Hzです。レコードプレーヤーのストロボもこれに併せて1分あたり6000回点滅します。これとターンテーブルにつけられた溝で合わせるのですが、この溝は45回転の場合1周あたり133本が刻まれています。単純に6000÷45です。133.333・・・割り切れないんです。割り切れない分の溝は刻めませんから133本できっちり合わせると45.11回転になる。実際はちゃんと合っていなかったという事実に気がつくわけです。
 50Hzでは45回転では割り切れない
50Hzでは45回転では割り切れない
西日本の60hz地区は1分間の点滅が7200回なので7200÷45で割り切れて160本の溝で合わせるとぴったり45回転で再生できるということです。
 回転数と電源周波数
回転数と電源周波数
ちなみに40回転、48回転、50回転なら50Hzでも60Hzでも割り切れて好ましかったように思ったりはします。当時規格を考えたRCAがありますアメリカは60Hzで他の地域のことを考えなくて良かったのかもしれません。それこそ50Hzで統一されているヨーロッパ諸国は困っておらんかったのかしら?

また、中途半端な33・1/3回転、これが50Hzでも60Hzでもぴったり合わせることができるいい数字だったともいえます。30回転や40回転でも合わせられますが、より高音質になる回転数を得て、なおかつ長時間再生ができることを考えた数字といえましょう。

45回転のレコードは多くが7インチレコードで、直径が17.8cmってことになりますよね。最も外周は1周55.8cm、一般的な最も内側は直径4インチ(10.76cm)程度でしょうから1周33.8cmになります。ざくっと溝幅が0.1mmから0.2mmとして、6分程度は再生できることになります。
内周と外周での走行路が半分とはいわないまでも長時間の曲ですと曲の先頭部と最終部で音質が大きく変わるともいえるわけです。3分程度の曲ですと最外周との差は80%程度ですから音質面では短い曲の方が利点があります。(溝の幅は楽曲や収録音量によって変わるのであくまで一般的な話です)12インチシングルを出す理由が45回転で音質の良い外周部を使い、なおかつ溝の幅を確保できるという意味になりましょう。

木曜日のタマネギ レコード回転数と内周、外周差等の試算
https://www.thursdayonion.jp/txt/20231109_01.xlsx

この盤面の大きさと楽曲の音質面の問題が45回転くらいがちょうど良かった?と思いますが、私の収集力では文献が見当たりません。1秒間に1.3回回るという意味では何か意味のある数字だと思うんですが。

そう思うと特に外周内周の差が大きい12インチのアルバム曲、外周側にヒット曲や派手目な曲を、内周側にバラードのような静かめの曲を置くのは非常に理にかなっています。アルバムの曲順はいろんな考え方があって、その一つにレコードの収録時間や音質問題も絡むとなると、エンジニアさん大変ですね。

さて、通常は高級機種にしか付いていないストロボによる回転数表示を普及機でも使えるようにストロボスコープを作成された方がおられますのでありがたく使わせていただきます。我が家、古めの蛍光灯灯具がありますのできっちりこれを使って(45回転はともかく)合わせられます。このサイト電気をちょっと囓っただけの私としてはとても面白く時間泥棒です。いつか貴社の製品を購入できるようになりたい。

FIDELIX 回転数表記が正確なストロボスコープを作ってみました。
http://www.fidelix.jp/others/STROBOSCOPE.html

 FIDELIX ストロボスコープ
FIDELIX ストロボスコープ



DENON DP-29Fの調整

今回購入したDENON DP-29Fは若干早く回っているように見えますので調整。特に説明書には書いていませんが、本体裏に調整ネジがあって、眼鏡用の精密ドライバーなどで調整できます。
 DP-29F調整ネジ
DP-29F調整ネジ
さらに回転数計測ができるRPM Speed & Wowを入れたスマートフォンをターンテーブルに載せて回してみます。なお、スマートフォンの内部機構によるものですので誤差が出ます。

RPM Speed & Wow
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.AM.AM.RPMSpeed&hl=ja&gl=US

 RPM Speed & Wow
RPM Speed & Wow

 RPM Speed & Wow
RPM Speed & Wow

 RPM Speed & Wow
RPM Speed & Wow
細かな設定は難しい上に、スマホのセンサー誤差もありますので、こんなもんかなぁという感じで設定完了。

手元にあるBOSE SoundLink Miniに接続(ミニプラグ外部入力端子があるので、プレーヤーからのRCA赤白オス出力から接続できるRCAメス-ミニプラグオスのケーブルも購入)して鳴らしてみます。うん、良い感じ。この小さなBluetoothスピーカーは外部入力端子が付いているのが珍しくて重宝しています。少し低音を強調しますし、高音はボリュームが大きいと割れ気味になりますが、狭い車庫の一室では問題ありません。

夜が長くて家にこもりがちな冬を前に、レコードを楽しく鑑賞できる場所を用意できました。サイト更新も・・・捗るかしら?
 危険なふたり
危険なふたり
沢田研二さんの「危険なふたり」の特徴的なイントロ、レコードだからどうこう言う気は無いんだけど、やっぱりわくわくして針を落として、少しチリチリしたノイズ(古いレコードですし)から、あのイントロが出てくる。懐古趣味的にいいですねぇ。

1980年代からは斉藤由貴さんの「悲しみよこんにちは」を。既に制作的にはデジタル化後ですが、こちらもイントロが特徴的。時間泥棒的に目に付いたレコードを次々に再生してみます。シングルレコードは長くても5分で演奏が終わり、入れ替えなければ次を聞くことができませんから、何か作業をしながら聞くのには全く適しません。でも、回るレコードを眺めながら聴くのはやっぱり楽しい。

アナログレコードは少なくともRIAAの規格制定である1954年以降(RIAA以前のものでも1948年にColumbiaが制定した33・1/3回転のLPレコード、1949年にRCAが制定した45回転レコード以降ならフォノイコライザ的な問題はあるにせよ聞くには聞ける)モノラル盤、CD-4などの4チャンネル盤にしても基本的に聞くことが可能で、このあたりの互換性というのが考慮されてきた歴史であることもわかります。
どの時代のレコードもこの目の前の安いプレーヤーで再生できます。これって、とてもすごいことだと思うのです。
同様に1981年にRed Bookで規格が制定されているCDも今でも当時のものを再生でき、過酷な環境ではなければ長期保管も問題がないとはされています。しかし、保存が悪いものは腐食し読み出せなくなる。アナログレコードはその溝が一部分でも残っていれば再生できる可能性があるメディアともいえます。
 悲しみよこんにちは
悲しみよこんにちは
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