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「Ya Ya(あの時代を忘れない)」サザンオールスターズ
音楽で「食う」、そして音楽を「売る」ということ
2015/12/02
歌謡曲が好き
定額音楽配信のところで書きましたが、今も日本の音楽界にはインターネットを経由する「モノ」としてのCD等の媒体を売らないことに、ある程度懐疑的な考えが強いと思うのです。
しかし、状況は刻々と悪くなっているのは明らかです。
日本レコード協会の統計資料で音楽媒体の生産枚数は2005年の309,952千枚から2014年には172,310千枚となり、この10年あまりで半分近くに落ち込んだことがわかります。ただし、これは日本レコード協会に加盟しているメジャーレーベルの発表する数であって、インディーズレーベルなどは含まれないことに留意する必要があります。
さらに、邦楽洋楽の対比が74:26から81:19になっているのも興味深いところです。既に洋楽は「媒体」での出荷を行わないアーティストが増えていて、国内流通するCDが邦楽に偏っているというのもありそうです。
こうなってくるとCD売り上げ枚数で分配されることになる「権利者」への収入は減ることになる。つまりCD以外の収入先を探さない限り音楽業界の発展は無いわけです。
元々CD1枚を売って誰にどのくらいの金額が入るかというのはレコード会社や契約形態によって異なりますがおおむね以下の通りです。
レコード店 25.0%
マスターテープ制作費 5.0%
CDジャケット制作費 0.5%
製造費 6.7%
宣伝費 15.0%
著作権印税 6.0%
・作詞家
・作曲家
・音楽出版社等
歌唱印税 1.0%
利益・その他支出 40.8%
1000円のCDで歌手に入るのは10円、作詞家、作曲家には20円という感じになりましょう。もちろん契約によりますので「給料」になっている方もおられるでしょうしね。
さて、ではitunes等のダウンロードで購入した楽曲の分配金はどうなっているでしょうか。
appleの販売手数料はだいたい30%ですので200円で発売した額のおよそ70%。140円が本来権利者に払われるはずです。そこから配信サービス業者がおよそ10%程度、CD製造費はかからないまでも、宣伝費や楽曲制作費などは同じくかかるわけですから、その分を差し引き、当然レーベル等にも配分しなければなりません。
通常jasracはダウンロード購入金額の7.7%または最低金額7.7円を徴収します。itunesで200円で購入した楽曲なら15.4円がjasracに納められます。そこからjasracが10%取って残り分配しますのでだいたい13.8円を権利者で分配です。作詞家、作曲家、音楽出版社等で、等分に割ったとして4.6円が作詞家、作曲家の収入です。
歌唱印税については1%と見るなら2円ってところでしょうね。
元々CDを売ろうが、自分たちで作詞、作曲、演奏を行うバンドとしても、10万枚売れたとしても300万円程度、歌唱印税だけだとしたら10万円程度となるわけです。これはバンド全体ですから人数割りしますと一人あたり・・・って話です。ダウンロードはさらに1曲あたりとしても少なく、たしかにそれだけ見ればアーティストがインターネットでのビジネスに否定的になるのは致し方ないでしょう。
さて、先のCD製造数で見る2005年頃といえばインターネットでの音楽配信ビジネスが日本でも始まった時期です。2002年から2005年頃はちょうどCDのコピープロテクト(CCCD)が導入されていた頃で、このCDをitunes等に取り込むのに苦心していたユーザーも少なくないという時期です。これを受けてその後CCCDを取りやめましたが、ダウンロード厳罰化の議論が始まった時期でもあります。
結局罰則強化はCDの売り上げ改善に影響は無く、音楽ユーザーを犯罪者呼ばわり(直接では無くとも間接的にね)した結果は見ての通りです。厳罰化されたとはいえ、実際違法ダウンロード自体も減らず、権利者に金を払わず聞く人が減ったわけではないのです。
しかし、明るい話題もあったはずです。youtubeをはじめとする動画共有サイトの始まりはこの頃ですし、メジャーレーベルに所属していなくてもインディーズレーベルや個人としてネットの力で売っていくアーティストが出てきたのがこの時期です。2007年にはiphoneが登場して、携帯電話は「電話」ではなくなって、手元の電話に楽曲を持ち歩き、そしていつでもオンラインで楽曲を購入し、聞ける環境になったわけです。そこに「CD」というものは全く必要じゃなくなったわけです。
しかし、そのオンラインでの楽曲販売にメジャーレーベルが対応したのはそれからかなり経ってから。その間、まともに音楽に金を払った人はCDからitunesなりにリッピングしiphoneに転送という面倒なことをして聞いたでしょうが、たいていの人はそういうのはすっ飛ばして違法アップロードのyoutubeでいいやなり、よからぬサイトからダウンロードして聞くのが「お手軽」だったわけです。それを簡単に責められましょうか。
結局音楽に「金を出さない」者に罰則だの言ったところで、CDを買うようになるはずもなく、音楽から離れていってしまっただけなのではないか。そして、CCCDやユーザーを犯罪者呼ばわりするその結果がCDを買っていた顧客すら離れさせてしまった。
音楽に金を払う者が減れば、その少ない払う客に多数買わせるというビジネスモデルになるほかないのがAKB商法でありジャニーズ商法であるわけです。結果的にメジャーレーベルの一部の権利者は「食える」が、多くのアーティストは「食えない」ことになってしまった。世は音楽であふれているのに、ヒット曲もあるのに、そのヒット曲を一般の人が「知らない」という矛盾が生まれたのも、このことと無関係ではないと思うのです。
音楽業界はyoutube等「無料」で満足してしまっている音楽を聴く人をもう一度「金を払う人」にすることを本気で考えなければならないのでしょう。その一つの方法が昨今日本でもやっと少しずつ認知され始めた定額音楽配信サービスであり、もっと言えば広告などで収入を得られるspotifyのような音楽配信サービスなのだと思うのです。同じ「無料」で聞くなら、少しでも権利者に還元される仕組みを活かさなければなりません。
音楽に金を出さない層は正味今の定額音楽配信サービス月1000円ですら払わないのではないかとも考えるところではあります。でも、ニコニコ動画のプレミアムサービスに500円払うのに抵抗のないユーザーはたくさんいます。youtubeも有料サービスの開始を発表しています。そしてその集められた収入は「権利者」に分配するビジネスです。事実「ボカロP」など楽曲配信で「食える」表現者が現れてきたわけです。
そういう手段での収入は先のjasrac管理から著作権収入を受けるより多い可能性があるわけで、今後も「レーベル」や「CDショップ」といった業態は受難が続くかもしれませんが、表現者はメジャーデビューしなくても自分の力量だけで「食う」事ができる可能性が増えたということでもあります。
音楽業界の発展というのは「音楽を提供する会社」が発展することではなく、音楽を作る人、歌う人、演奏する人、そしてそれに関わる人が発展していくこと。それが必要で、その人たちがちゃんと報酬を受けて次作を出そうというモチベーションに繋がること、そして、自分も音楽をやってみたいという人が増えていくこと。それが「発展」です。
今年大手のネット企業やamazon等がこぞって参入してきた定額配信サービスという「黒船」にどう乗っていくかがメジャーレーベルの力量ですし(プレイリストに加えられ、知らずに聴いた曲が「発見」なのは誰もが経験することです)それを発展させるためには先の日記の通りメジャーレーベルや芸能事務所の協力が不可欠です。
そして、欧米と異なり日本はまだCDショップ流通がまだ維持されているからこそ、ここで「新しい発見」をした音楽ユーザーにCDなりDVDなりを買ってもらうことができる。それが大事なことなのだと思うのです。「音楽を提供する会社」につぶれろというわけではなく、「音楽を提供する会社」だからこそできる「音楽を愛する人への提案」も必要なことだからです。
もう時間はありません。いつまでもアイドルの複数枚数買い時代は続きません。もう5年も放置したらCD流通のシステム自体も崩壊してしまうし、メジャーレーベル自体も統廃合が避けられなくなります。今ならまだきっと、間に合うと思うのです。