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キャリアがあるから臆病になるのだ、キャリアがあるから怖さを知っているのだ。


2019/07/06  歌謡曲バー 80年代歌謡曲


タイトルの言葉は7月6日付の北海道新聞に掲載されたえのきどいちろう氏のコラムの最後に書かれていた言葉。これを読んで、ハッとしました。


ファイターズのエースとして活躍していた吉川光夫投手がジャイアンツにトレードされたのは3年前。先日電撃的に古巣ファイターズにトレードで戻ってきたわけです。吉川投手の印象は凄い時とすごくない時の落差が激しいという、打たれない時は堂々とした、心臓に毛が生えたんじゃないかというくらい誰も打てないだろうという球を投げ、打たれ出すと、さっきの心臓は「ノミの心臓」になったが如く縮こまった投球を見せ大量失点するイメージです。


そしてえのきどさんのコラムな訳です。コラムの最後は
「キャリアがあるから臆病になるのだ、キャリアがあるから怖さを知っているのだ。大人は心に小さな傷をいっぱい持っている。」
吉川投手の1、2回をほぼ完璧に抑えた吉川投手の復活登板。3回に失点しマウンドを降りる姿をこのように評しました。


振り返って、自分の仕事を思い出した時に、時に怖いもの知らずのようにイケイケで、側から見ても乗ってるように見えるであろうという時と、臆病に、何を怖がってるか自分でもわからないくらいに縮こまっている時がはっきりしている。
怖いのですよ。何が怖いかは自分でもわからないのだけど、失敗したくない、そして、明日この仕事がなくなっていたらという恐怖。私の失敗を手ぐすね引いて待っている人との戦い、そして、守りたいものを奪われるかもしれないという恐怖。


以前とあるショップの店長だった私は、毎日の日計表をつけるのが非常に苦痛でありました。一応は雇われ店長な訳で、数字に責任もある。しかし、ニッチな店は毎日の売り上げが一定しない。1日で何十万も売り上げる日もあれば、客が全く来ない日もある。「0」ならばまだいい。「350円」とか日計表に書く時は非常に苦痛。店の月間目標や年間目標に満たない状態が続けばそれも非常にストレス。

最初の年は訳も分からず、いっぱいいっぱいで余裕がない。試行錯誤して悩みはするけど、最初の年だししゃーないじゃないかと割り切れる。

2年目は勝手がわかってきて、店の常連客も付いてきて、何が喜ばれるかをある程度理解して売上が伸びていく。ある程度の心の余裕も出てくる。しかし、繁盛店にするには何を変えればいいか悩むことになる。

3年目、いつもの顔なじみのお客さんが新しいお客さんを紹介してくれるようになる。それは嬉しいんだけど、来店客数の割に売り上げが上がらない。どうしても「客単価」を気にするようになる。新しい人が増えれば「客に喜ばれること」が少しづつ変わっていく。そこで店のコンセプトを曲げるかどうかを悩むようになる。常連客から意外な批判をもらうようになるのもこのころかもしれない。

4年目。ニッチな店に競合店が出てくるようになる。資本力があり、店員の質も高い競合店に苦戦する。上層部も潮時としたのだろう。私はその職を失うことになる。その店はその後幾ばくもなく撤退を余儀なくされ、今は会社も残っていない。


私のやり方が悪かったんだろうなぁ。その3年半ほどの「接客商売」は今でも自分の中で棘となって残っていたりする。今でも日計表を前に売上が無い、利益率が〜と夢に見て飛び起きるほどで、相当前のことではあるんだけど、よほどこの時期は自分にとって辛く、反省の多い時期だったんだろうなとも思う。



ちょっとバタバタした日が続いて約2週間ぶりにお邪魔したすすきのの歌謡曲バー「ザ☆ベストテン」さん。金曜日には珍しくお客様がいらっしゃらない。「歌謡曲バー」というジャンルはすすきのではかなりニッチな市場。連日連夜満席でってことはなくて、客入りが平均しないところがあるのは見て取れる。もちろん満席で入れない日だってあるんだけど、カウンターに一人でグラスを傾ける日もある訳です。


ママさんの体調の悪さも気になるところではあるけれど、ぼーっと80年代歌謡曲を聴きながらお酒が飲めるこの空間は先日の記事の通り非常に貴重ではあります。かといっていくらリーズナブルといっても毎日通うことができるほどの時間もないですし、予算もない訳です。毎日通いたいのは山々ですが、毎日特定客がいるって店もなかなか入りにくいですよね(笑)

私には、この店はとても素晴らしいですよとここで訴えるくらいしかできないのだけど、これまた「歌謡曲」というかなりニッチな市場ではありますので、誰でもお勧めできる訳じゃないですしね。でも、私くらいの40代、50代など70年代、80年代歌謡曲にどっぷりハマってる世代にはきっと楽しめますし、それより若い世代の方でも、「新しい曲」としてきっと楽しめる空間ではあろうかと思います。一人で入りやすい店です。女性一人のお客様もお見かけしますし、お酒が飲めなくてもソフトドリンクで楽しめるのもあります。何より店で大声あげてる方を見かけない。あの頃の歌謡曲聞いてニコニコしてる人たちが客が来る店ですからね。

そしてどこかミステリアスでおっちょこちょいなママさんの人柄が魅力の店でもあります。屈強なおっさんが経営してる店だったら通ってたかしら?とも思うわけで(それでも歌謡曲好きとしては通ってただろうなぁとも思いつつ)ママさんの雰囲気にはきっと虜になっちゃうんじゃないかなとも思います。本当にすすきののママという感じのない方です。それもまた魅力。


では、昨日流れていた曲を少し思い出して

出航 SASURAI
寺尾 聰
1981/04/05

TAXI (with ラッツ & スター)
鈴木 聖美 with Rats & Star
2013/04/10



そして忘れてはいけないこの方(笑)

今夜、桃色クラブで。(LIVE)
及川光博
2010/12/15


改めてタイトルの言葉ですが、キャリアというのを幼少からの経験と置き換えて、過去の様々な経験があるから多くの人は一歩先に進むことができないわけですね。結果が見えてるよなんていう。すすきのの飲食店は新規開店しても多くの店が1年以内に閉店します。3年持つ店なんて数えるほどしかありません。新規で開店しようなんて気概を持つ方が多くないことはわかると思います。
そんな中、「歌謡曲バー」というニッチなスタイルの店が4年目を迎えられることは素晴らしく。ママさんの経営者としての才覚と店のコンセプトが支持されたんだろうとも思うわけです。時に大胆に物事を行う大事さ。自分がやりたいときにやりたいことができるということの大事さを感じるのです。そういう意味でママさんを尊敬するんですよね。

金曜日の夜、夜もだいぶ更けてから、ポツポツとお客さん。顔なじみのお客さんと他愛のない話をするのもこの店の魅力。利害がないという言い方はよくないかもしれないけど、直接仕事で関わらない方との会話はとても新鮮で、そういう意味でも訪問するのをやめられないんだよなぁ。いい夜でした。

SOLITUDE
中森明菜
1998/05/26

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